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東大理T受験合格体験記・地方・田舎の凡人の大逆転勝利

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東大理T受験合格体験記・地方・田舎の凡人の大逆転勝利

ここでは東大を目指すしかないという苦しい状況に追い込まれてから、 受験生として過ごした現役生時代、浪人生時代の状況を振り返りながら、 合格するまでの体験記を生々しく再現したいと思います。

既に学校そのものが東大合格至上主義というべきか、東大合格に全てを捧げるという基本方針を徹底していたためか、 皆、好むと好まざるとにかかわらず、それに従わざるを得ない状況でした。

ところで東大に限らず国立大学は1次試験のセンター試験と各大学・各学部の2次試験の総合成績で合否が決まるため、 センター試験対策、2次試験対策と個別に対策しなければならないのは皆さんもご存知の通りです。 (2次試験の対策はセンター試験の対策の延長線上にはありません。これは非力なバッターの場合、ヒットの延長が決してホームランにならないことと同様です)

1次試験として大学入試センター試験が発足したのは1990年で、それまでは「共通1次試験」と呼んでいました。 僕の現役時代は大学入試センター試験が始まって2年目で、中身は共通1次試験とほぼ同様で全てマークシート方式、 英語、数学、国語の3科目は200点満点、社会、理科は1科目100点満点というところも同様です。

国立大学では、英語、数学、国語、理科1科目、社会1科目の合計800点満点中の得点で、 志望大学に出願し、各大学・各学部で定められた2次試験倍率を超える場合、得点の高い順からその規定の倍率の定員まで 2次試験の受験が認められ、それより低い点数の受験生は門前払いに遭います。

これを「足切り」と呼ぶのは皆さんもご存知の通りです。

まず東大合格を目指す上での第一歩は、センター試験でこの足切りに遭わず、2次試験の受験資格を得ることです。

センター試験は800点満点を110点に圧縮換算され(総合得点×110/800で算出)、2次試験440点満点中の成績との合計で 得点の高い順から合格者を出すという方式です。

このように、東大の選考基準はセンター試験のウエイトが他大学よりも低く2次試験の成績が重視されるのが特徴です。 もっと極論してしまうと、センター試験は足切りに遭いさえしなければよく、あとは2次試験でどれだけ高得点を 叩き出せるかで勝負が決まるわけです。

このように言うと、センター試験の得点の低い人の方が2次試験の出来も悪い可能性が高いのだから、 やはりセンター試験は重要なのではないかという声が聞こえてきそうですが、 必ずしもそうとは言えないところが、東大の2次試験の面白いところです。

僕などがその最たる例で、僕はセンター試験(模試を含む)で700点を超えたことは一度もありませんでしたが、 東大の2次試験には滅法強く、浪人生時代、模試でA判定(合格率80%以上)を連発したのは他のページでも述べた通りです。

東大の2次試験は難易度もかなり高く独特で、東大理科T類に限れば、440点満点中半分の220点を取れば合格 というのがおおよその目安です。半分取ればいいんだ、と安易に考えてはいけません。 センター試験で9割取れるようなツワモノが、東大2次試験で全く歯が立たずに絶望し東大受験を諦めたという例は 枚挙に暇がないほどです。

多くの東大受験生はそのような難易度の2次試験で半分の得点を叩き出すことに命を削るような思いで取り組んでいましたし、 僕も同様でした。

他のページでも述べたように僕は難問になればなるほど力を出せる反面、易しい問題での取りこぼしも結構多いのが難点で、 それに加えて最大の苦手科目の国語がネックになり、センター試験の総合得点が伸び悩んでいました。 僕のようなタイプはセンター試験での足切りに気を付けなければならないのですが、 共通1次試験ほど足切りが厳しくないようで、東大理科T類に限れば僕の現役時代、浪人生時代ともにほぼフリーパスで 2次試験を受けることができる状況だったのが救いでした。

いずれにしても前述したように東大入試の場合、2次試験重視ですから、やはり2次試験にウエイトを置いた対策が必要となります。

東大理系2次試験440点満点の内訳は、英語120点(120分)、数学120点(150分、全6問)、国語80点(80分、現代文2題、古文1題、漢文1題)、 理科120点(150分、2科目選択、1科目当たり3題)です。

数学は1問当たり解答用紙1枚で全くの白紙、理科は罫線がついている点が数学と違いますが、基本的には全くの白紙です。 東大入試形式の模試もこれに倣っていますが、初めて東大入試形式の模試を受ける受験生はまず、 この全くの白紙の答案用紙に面食らう人も多いようです。

そして数学は基本的に誘導がありません。同じクラスの生徒の中には東大入試形式の数学の問題に、文字通り手も足も出ず、 不覚にも0点を取った人が続出していました。

「この試験で0点取るかなあ、簡単な問題もあったのに・・・」と僕は思いましたが、 それは僕が数学が得意だからであって、一般的な受験生はこの東大入試形式の数学で0点を取ることは 決して恥ずかしいことではないというくらいの難易度なのだそうです(僕はそうは思わないのですが・・・)。

学校での東大理系対策の骨子は、一言でいうと「凡人の凡人による凡人のための東大合格作戦」でした。

というのも、この学校の生徒は、いわゆる「天才肌」と言われる生徒は皆無に等しい状況で、 そもそも天才しか東大に合格できないとすると、学校の目指す東大合格2桁という至上命題は達成できないことになります。 従って、これは学校側から見れば最も見込みのある現実的で妥当な作戦と言えます。

当然のことながら入試の合否は各科目の得点の合計得点で決まるため、どの科目に力を入れるか、どの科目で何点を取るか という目標設定、目安が重要となってきます。

学校の担任によると、「東大理系2次試験科目の英語、数学、国語、理科2科目(理系の場合はこの高校ではほぼ100%物理と化学)の中で、 才能の占める割合が高いのが数学と物理。国語も努力が結果に反映されにくい科目で非常に点数が上がりにくい。 逆に言えば、英語と化学は努力の占める割合が高く努力が結果に反映されやすい科目である。 だからお前らは英語と化学に力を入れろ」ということでした。

担任が「才能を必要とする」と宣う数学と物理に関しては、さすがに0点では合格できないため、 最低限のラインを超えることを目標にするということでした。具体的には、 「数学は全6問(1問20点で120点満点)、全てに解答しようとすると虻蜂取らずになってしまい、 部分点もそれほど期待できるものではない。6問のうちから易しい2問を見つけて2問完答して40点を確保するのを目標にする。 それ以外の難しい問題は白紙のまま捨ててしまってよい」、「物理は最後まで到達できなくても部分点を稼ぐ方針でいくこと」 というのも学校側、担任から提示された基本方針でした。

「初めから諦めてそんなに低い目標に甘んじていたら、合格なんかできないじゃん」と僕は心の中で吐き捨てましたが、 これはこの学校の生徒(上の学年を含む)が東大形式の試験に太刀打ちできず零点またはそれに限りなく近い点数しか取れない生徒が続出しているのを つぶさに見てきた上で立てた苦渋の作戦だったようでした。

僕は数学と物理が得意だったので、これが当てはまらないように感じましたが、 実は僕自身も東大の2次試験形式の問題で、 数学と物理で高得点を叩きだせるわけでもなく、英語や化学も特にできるわけでなく、 全く決め手に欠ける学力しか持ち合わせていませんでした。

それでも総合力は結構高く、前述したように高校2年の2月に受けた河合塾の東大入試オープンジュニアでは 東大理科T類でB判定(合格率60〜80%)でした。 このままこの調子で続けていれば、現役合格できるはずでした。

しかし高校3年になってからは、前述ような学校の合格作戦に僕自身がなじめず、 担任の先生も僕たちを奮い立たせる代わりに自信を喪失させることばかり言うことに加え、 度々嫌味も言う先生であったため、それが大きな精神的ストレスにもなり、爆発しそうな毎日を送っていました。

高校3年の時の担任は数学の先生だったのですが、前述したように 「東大の数学は2問完答を目指せばよい、あとの問題は捨ててしまえ、白紙でよい」と 言っていましたが、実際に教材として使っていたのは、Z会の東大模試の過去問でした。 これは予備校の東大入試形式の模試や東大入試の本番の問題と比べて、難易度がかなり高いものです。 さらに「大学への数学」の「新数学演習」も使っていましたが、これも難易度が高い上に解答がやたら短く天才的です。 問題の本質に気づけば、数行でそのような鮮やかな解答を書けるのでしょうが、 それは東大理系入試でさえも、必ずしも必要とはされない能力です。

説明が前後してしまいますが、数学には「凡人の解き方」というものがあります。

問題文で示された情報をきちんと咀嚼して丁寧に図を書いて数式化して、 数学の基本的な解法を組み合わせながら、それを1つ1つ平凡に泥臭く紐解き、 最後の答えに向かって一歩一歩着実に進めていった結果、最後までたどり着くというような解法です。

数学で完答を目指すのが6問中たった2問という目標を設定するくらいのレベルの生徒を対象にするのであれば、 このような「凡人の解き方」を指導し、実践すべきですが、そのためには 実際に使う教材の選定の仕方がそもそも間違っています。

また先生自身が授業で東大レベルの問題をこのように解けばよいという見本を授業で示さなければならないのですが、 それを先生はしませんでした(先生自身がそのレベルに達していなかったという可能性も当然あります)。

僕が数学の先生であれば、東大の問題としておなじみの不整形の立体の体積を求める問題や漸化式を使った確率の問題などの 比較的頻出の問題を授業で度々取り上げて解説するのですが、そのような手間すら惜しんでいるように感じられました。

また数学の問題をはじめから「捨てる」という考え方も大いに疑問です。

僕が見る限り、整数問題以外は、問題を読んだときには「何となく解けそう」と思えるが、 実際にやってみると意外に難しいというタイプの問題が大半を占めます。どこでつまずくかは実際に手をつけてみなければ分からないので、 初めから捨てるのではなく、解答用紙に書きながら進めてしまってよいと思います。それで部分点は確実に取れます。 解ける問題はそうしていくうちになし崩し的に最後の答えまでたどり着いてしまうものです。

このような事実に気づいたのは浪人生になってからで、当時は学校の先生に言われるままに、 捨てる問題の選択に苦慮して、本当は解けていたはずの問題を捨ててしまったことによる失点も相当なものでした。

学校の方針が自分に合わなかったことと、精神的ストレスから抑うつ状態になり、記憶力や思考力、集中力が 全て別人と思われるほどに低下してしまった影響もあったのだと思いますが、 成績は見る見る急降下し、最後には東大の模擬試験でE判定を連発するほどに落ち込みました。

得意であるはずの数学、物理も振るわず、かといって英語、化学、国語も全くダメで、 高校1年、2年時代のあの勢いはどこに行ってしまったのかというほどに落ち込みました。 クラス全体が総じて落ち込んでいたようで、これは担任の指導方法が間違っていたことを如実に示していました。

東大対策だけでなくセンター試験対策も全く振るわず センター試験の模擬試験も800点満点中、600点にどうしても届かないという、それはひどい状況でした。 何もかもが空回りでした。

当時はそんな自分にいら立っていて「こんなはずではない」と 自分自身に怒りが募っていました。そして学校や担任への怒りも募っていました。 きっとそのような精神的なストレスが限界に達して、抑うつ状態となり、記憶力や思考力、集中力が低下してしまっていたのだと思います。 このとき精神科を受診していたら、うつ病と診断されても少しもおかしくない状況だったのではないかと 後になってこの時の自分を振り返ったりもします。

余談ですが、当時の日記も学校に対する不満でほとんど全ページが埋め尽くされています。 この時点では僕はもう東大に受かる気が全くしなくなっていました。 1年前、2年前はあれほど快進撃を続けていた僕としたことが、本当に別人と思われるほどの低迷ぶりでした。

冬になりセンター試験も間近に迫っていましたが、僕は志望校を東大から東工大などに引き下げるつもりは全くありませんでした。 まずはセンター試験で足切りに遭わないようにという、いかにも低い目標すら達成が怪しくなってきていました。

学校ではセンター試験対策を軽視していて、「あんなものは練習すれば慣れるから大丈夫」と直前までセンター試験対策の 時間が与えられませんでした。しかし冬休みになるとセンター試験対策漬けの毎日となり、 大晦日、正月も休みなく学校でセンター試験の演習をさせられました。 この時は1日全科目全ての問題を解き、解答と合わせて自己採点する、ということを連日繰り返していました。

数学と物理は基本満点ですが、国語がネックになり、英語も何故か振るわず、社会(地理)は意外に重箱の隅をつつく問題が多く、 全く伸びませんでした。ここで僕は完全に自信を喪失してしまいました。 センター試験前で既に疲労困憊して、どうにもならない状況でセンター試験を迎えることとなりました。

センター試験当日は雪が降っていましたが、センター試験の1科目目の英語がまずまずの感触で数学もばっちりでした。 「とりあえずセンター試験は大丈夫なのではないか」という漠然としたかすかな希望の光が差し込んでくるのを感じました。 「何としても東大に受かってみせる・・・それが実現した暁には、僕はこの町始まって以来の東大生だ・・・」 そう自分に言い聞かせていました。

センター試験、終わってみれば600点台後半に何とか達し、センター試験形式の模擬試験のこれまでのどの成績も上回る結果を 出すことができました。何とか東大には足切りに合わずに2次試験を受験するチャンスが与えられそうでした。

ところで国立大学の受験日程に関しては、僕の受験する2年前までは各大学によって試験日程が早いA日程と遅いB日程に分かれていて、 東大はB日程で、チャンスは1度だけでした。A日程の最難関は京都大学で、仮に京都大学を受けたとすると、B日程の試験の前に 合否が発表されてはB日程入試の前に入学手続きが締め切られてしまいます。 つまり京都大学に合格したとしても、東大を受けるためには京都大学の合格を辞退しなければならないわけで、 2年上の先輩たちの中には京都大学を辞退して東大を受験している人も複数いたようでした。

僕の1年上の代からは、現行の「前期日程」−「後期日程」となり、 いずれも東大を選択することができるようになり、2度のチャンスが与えられることになりました。 これは非常に大きな意味を持っています。

東大入試の前期日程は、前述したように 1次試験がセンター試験で、英語、数学、国語:各200点満点、理科、社会:各100点満点の計800点満点の総合得点で 「足切り」を行い、この総合得点を110点に圧縮換算し、 2次試験の440点満点(理系の場合、英語120点、数学120点、理科2科目(1科目60点満点×2)、国語80点) の得点との合計で合否が判定されます。2次試験の競争率は理科T類で2.5倍、理科U類で3.5倍です。

一方、東大の後期日程の場合は、センター試験の受験科目のうち英語、数学、理科の計500点満点の総合得点で足切りを行い、 2次試験は総合科目T(英語の科学論文など難易度の極めて高い英語の記述問題、配点100点)、総合科目U(物理と数学の融合問題、配点100点)、 そして選択科目(配点300点、数学、理科(物理、化学、生物)のうち選択し出願した科目)の計500点満点で合否が決まります。

この後期日程は「敗者復活戦」ということに加え、東大理Vの前期日程に落ちた受験生がここに流れてくることもあり、 結構レベルが高く、競争率も4〜5倍と言われます。

僕は前期日程、後期日程とも迷わず東大に出願し、いずれも足切りに遭わず受験資格が与えられました。 後期日程の選択科目は数学を選択しました。

センター試験が終わると高校も自由登校となり、自宅での学習がメインになりました。 学校の束縛と精神的ストレスから解放されて、やっと自分のペース、学習スタイルで進めていくことが できる状況になりました。既に僕はこの1年間で成績が急降下して完全に自信喪失していて、 この時点では東大には全く受かる気がしなかったのですが、最後に与えられた自由な40日間を最大限利用して 悔いの残さないようにしようと誓いました。

僕が東大に合格すれば、この町始まって以来の東大合格者ということも、僕にとっては大きなモチベーションになりました。 エンジンがかかるのが遅すぎたような気もしますが、自宅での生活は僕にとって理想的な環境でした。

今更この期に及んで問題を解く実力を向上するなどの時間はなかったため、問題と解答をひたすら覚えることで、 1つでも多くの出題パターンに接すれば、実力が向上したのと同じ効果が期待できる、それが短期間での得点力向上の最善の作戦だと考えました。

毎日、東大の過去問に向かいながら、これを全部覚えるのだ、という意気込みで頑張りました。 早稲田大学、慶応大学も併願していましたが、あくまで東大に照準を合わせて取り組みました。

慶応大学は僕の受験人生で最初で最後の遅刻(電車内が乗客で混みすぎている上に、 駅のプラットフォームにすきまがないほどの待ち行列ができていて、 不運にもなかなか乗れなかったことが原因でした。理想を言えば、このような状況を事前に下見して確認しておくべきでしたが、 通常そのようなことをする人は少ないと思われます)となり、 その影響もあったのだと思いますが不合格、早稲田大学理工学部応用物理学科も不合格となりました。

センター試験が終わってからの40日間で、東大入試向けの実力は確実についているということが はっきりと実感できていて、試験は合格するつもりで受けました。

東大の前期日程は感触は今一つでしたが、それでもそれまでの東大入試形式の模擬試験よりもはるかに良い感触ではありました。 これに受かれば今までの辛かった高校生活を帳消しにできる、と思い、東大後期試験対策の勉強に取り組みながら、 合格をひたすら祈りました。しかし結果は不合格でした。「やっぱりダメだったか、でも受からない可能性の方が高かったのだから、 仕方ない」と意外なほどあっさりしていました。それでもセンター試験が終わってからの40日間の勉強で、 何かをつかんだ感触は確かにあり、このままこの状況で勉強を続けられれば来年は合格できそうだという確かな手応えを感じました。

学校に束縛されて抑うつ状態に陥り停滞していた状況が、センター試験後、学校の束縛から解放されたのをきっかけに一変し、 抑うつ状態から回復すると勉強の効率とモチベーションは一気に高まり、学力がまた急上昇を始めました。 ただそれでもセンター試験から2次試験までの40日間はあまりにも短すぎて、学力が伸びきらずに試験当日を迎えてしまったことが悔やまれます。 しかしこれが大きな自信になり、僕の場合はこのように学校の束縛から解放された方が実力が伸びるのだということを 確認できたことに大きな意義があります。この自信がこの後の浪人生活において大きな支えになりました。

東大の後期日程の試験日は高校の卒業式とバッティングしてしまいましたが、当然のことながら受験が優先です。 後期日程では数学、物理、化学のうち最も得意な数学を選択しましたが、こちらも不合格となりました。 2月早々に受験した東京理科大学理学部物理学科は合格していましたが、上述したようにあと一浪すれば 東大に合格できる確かな感触を得ていたこと、そして辛かった高校3年間の代償が東京理科大学では割に合わないという思いもあり、 自らの意思で、一浪して東大だけを目指すことを決心しました。

このようにこの短期間の自宅勉強で確かな感触をつかんだものの、 現役大学受験が終わってみれば、東大、早稲田、慶応全て不合格で、わずかに東京理科大学合格のみという 惨憺たる結果でした。理系の同じクラスからは東大合格は5人出ていて、まずまずの結果だと思いますが、 学校側としてはこのクラスから東大合格を15人以上出したかったのだそうです。

入学試験が全て終わって学校に登校した最後の日、担任は「皆が皆、この1年間で信じられないほど 成績が下がった。入試の実績も当初の目標をはるかに下回ってしまった。本当に残念という他ない。 今年このやり方で結果が出なかったのだから、次からやり方を見直したい。」と言っていました。

またこれから一浪するにあたっての心構えについて聞かされました。

「当校出身の浪人生の成績は総じて芳しくない。当校でこれだけ勉強して結果が出せなかったということは、 それ以上頑張らなければ良い結果が出ないということでもある。1年間わき目もふらずに必死に 努力を続ける覚悟がなければ結果が出ないどころか、逆に現状維持も難しいと思う。 浪人生の1年間は今までのように学校の縛りがなくなる分、気が緩んでしまう恐れがある。 実際、君らの先輩の中には浪人生時代にパチンコに明け暮れてろくに勉強もせずろくに大学に受からなくなった奴もいる。 相当自分に厳しい生活を送らなければダメになる可能性が高い。」という内容でした。

そして最後に「来年これ以上の結果を出すのは、君らには難しいのではないか」という内容の一言をボソッと吐き捨てたのにムカッときました。

「俺はそれとは真逆だ。学校の束縛が強すぎたばかりに精神的ストレスで抑うつ状態となって学力が伸び悩んだ。 その束縛から解放されてから、また学力が急カーブで伸び始めた。今に見てろよ。来年は必ず東大に受かって驚かせてやるからな。 俺は普通の奴らとは違うんだよ」と心の中で吐き捨て、遠くから担任の顔を睨みつけました。

僕ははっきり言ってこの高校が嫌いでした。学校の実績を挙げることを優先するあまり、生徒1人1人の幸せや自由が 軽視されているように感じていましたし、これは人権侵害にも発展しかねない由々しき問題でした。 生徒たちは僕を含めて大人しい優等生たちばかりであったため、大事には至りませんでしたが、 学校側や担任に反発して暴力をふるう生徒が大勢出現して暴動、デモに発展しても少しもおかしくない状況でした。

確かに学校側、担任の先生が言うように、この高校の浪人生の成績は大したことがなく、現役時代を下回る人の方が多い という話は以前から聞いていました。しかし僕は明らかに学校に束縛されるよりも解放された方が実力をつけるのに適した環境でした。 だから学校側の言うことは何一つ聞かず、ひたすら自分の信じる道を進もうと決めました。

予備校選びについても、高校とはきっぱりと関係を断つ意味で、この高校とは全く関係のないやや遠方の予備校を選びました。 結果的には僕の取った行動は全て正解で、ここから僕は浪人生の1年間は周囲の皆が別人と思うほどの快進撃を続け、 学校の先生は「あいつはそんなすごい奴だったのか」と驚嘆していたとのことでした。その快進撃については次のコーナーで書きたいと思います。

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