30代からの医学部学士編入合格への道

医学部学士編入:勤務医の現状・実際にあった忙しかった1日

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勤務医の現状・実際にあった忙しかった1日

これは最近の病院勤務で実際にあった超過酷な1日で僕自身の実体験です。

その日は午前中、定期外来22人の予約が入っていて、それが終わったら午後から救急外来当番の予定でした。 病院医師には「研修日」と言って、平日で1日、事実上の休日があって、その日は別の医療機関に行ったり医局に行ったりして、 研修したり勉強したりするのですが、この曜日は内科5人のうち2人が研修日になって、内科3人で仕事を回さなければならない日でした。 その誰もが外来をやっているという厳しい状況です。 仮にこの日、病棟で患者の状態が悪化して呼び出された場合には、外来を止めて病棟に行かなければなりません。 本当に何もないことを祈るばかりですが、こればかりは成り行きに任せるしかありません。

「今日も戦争だ、いざ出陣」といつも通り午前7時30分過ぎに自宅を出て病院に向かいました。 外来が始まるのは午前9時ですが、午前8時15分に内科カンファ、8時30分に全体カンファがあるので、その前に 午前7時半頃には病院に行き、患者の状態を電子カルテでチェックしておきます。 何か緊急で処置が必要そうであれば、例えば呼吸状態が悪い患者さんの診察、採血・レントゲンオーダー、血ガス(動脈血採血)など この時間に終わらせてしまいます(そのようなことは滅多にありませんが)。

全体カンファは1分程度で終わり、それが終わると一度医局に戻り、物を取ってから内科外来に向かいます。 今日は午前中22人、いつもより多いから早めに始めようということで、8時50分頃に外来をスタートします。 1時間5人さばいても4時間半近くかかる、まさに「戦争」です。 定期外来ですので、大抵の場合は何か新たな症状があってそれを主訴に受診するわけではなく、 その多くは糖尿病、高血圧、脂質異常症、逆流性食道炎、便秘、まれに気管支喘息、COPD、甲状腺機能低下症などで内服中で、安定している方です。 患者を呼び入れる前に前回、前々回の内容をカルテでざっと復習して(当然、前日も復習はしておきますが直前にも復習します、 これは僕自身の慎重な性格によるところが大きいかもしれませんが)、それから患者さんを実際に呼び入れます。 「特定疾患療養管理料」というものを取るために、患者1人1人の最近の生活習慣について聴取して、 それに応じて何らかのアドバイスをしなければならず、毎回、血液検査をする患者さんも多く、その結果も説明しなければならないため、意外に時間がかかります。 そのようにして何もなければ診察を終えて、次の外来の予約を入れて患者さんの都合が大丈夫かを確認して、 今日の診療の内容を迅速にカルテに記載して、内服薬を日数分間違えずに処方して、次回の検査オーダーを出して、「特定疾患療養管理料」の項目を必ず入力して、 カルテを閉じると1人終了です。1時間で5人診るということはこれを平均12分程度で行わなければならないわけです。 実際やってみると分かりますが、これは結構なスピードが要求されます。 患者さんが新たに症状を訴えた場合や話が長い場合、耳が遠くてコミュニケーションがとりにくい場合には、かなりの時間がかかることがあります。 また処方ミスや入力漏れがあると、途中で疑義照会が来たり看護師さんやクラークさんに質問されたりして時間をロスするので、 ミスしない正確さも同時に求められます。そうしないと到底時間内に終わりません。 外来診察はまさにスピードと正確さの両方が要求される極めてハイレベルな作業です。 よく「仕事が遅い、ミスばかりする」という人がいますが、そのような人は仮に運よく医師になったとしても外来診療はできないと思います。

このようにして診察していると5人目だったが、診察の途中で僕の院内ピッチが鳴りました。 病棟からでした。○○先生(あいにくその日は研修日で休み)の患者さんで食事をした後から呼吸状態も悪くなって今酸素7Lに上げているのですが、 なかなかサチュレーションが上がらないんですよ。食事でむせていたので、誤嚥したのかもしれないです。 熱も39℃に上がってきました。一度診察をお願いしてよいですか」と病棟看護師から診察依頼が入ります。 外来をストップして病棟に駆けつけて、患者さんのカルテをざっと見てから患者さんを診察します。 「誤嚥性肺炎だと思います。抗生剤を始めようと思うので、その前に血液検査、レントゲンをします。 ガス(血液ガス分析)と血培、痰培も取るので、準備をお願いします」と病棟看護師に依頼します。 「家族は呼びますか」、「呼んでください、挿管、心マはなしですが、万一に備えてNPPV(非侵襲的陽圧換気)までは希望するのかどうかは 確認が必要です」とこれも依頼します。採血とレントゲンの結果が出たら、抗生剤の点滴オーダーを入れます、と それだけ言って再び外来に戻りました。

そうして診察していると3人ほど進んだところで、再び病棟からコールが鳴りました。 「患者さんには「すみません、ちょっと」と言って席を外してピッチを取ります。 「ご家族がいらっしゃいました。説明をお願いします」とのことでした。「今、外来診察中ですので、今の患者さんが終わったら行きます」と言ってピッチを切ります。 「すみませんでした」と言って外来診察を再開します。「先生も大変ですね」という外来患者さんの言葉を聞くと、ほっとします。 診察が終わって、例のようにカルテ記載してオーダー一式を出して外来看護師さんに渡して、病棟に駆け上がります。 「患者さんの家族に説明します、呼んで下さい」と言いますが、看護師さんが病室を見に行くと、先ほどまでいた患者さん家族がいません。 「すみません、今どこかに行ってしまったみたいです」とのことでした。 「あの、僕も外来を止めてここに来ていて、ここで待っていたら外来が終わらなくなってしまうんです」と僕も当惑してしまいました。 「それなら、外来に降りてもらいましょうか」と看護師さんは気を利かせてくれました。 「そうして下さい、内科〇ブロック〇番ブースです」と言って、外来に駆け下りました。 1人診察を終えると、病棟看護師さんが待っていました。今、病棟患者の家族が待っているということでした。 僕は家族を呼び入れて、病状説明を行いました。これは外来患者1人の診察時間よりもかなり長かった記憶があります。 誤嚥性肺炎になっていて、今、かなり呼吸状態が悪く危険な状態であることを説明し、最終的には気管挿管や胸骨圧迫はしないことを再確認しましたが、 NPPVまでは行ってほしいということでした。 酸素10Lでサチュレーションが90%を切る場合にはまた連絡を下さい、と病棟看護師に伝え、 採血とレントゲンの結果を確認して、抗生剤の点滴オーダーを出してとりあえず一段落しました。

また外来診察に戻れると思ったのもつかの間、今度は別の患者さんが発熱、呼吸状態が悪化したということで、 これも外来診察中に別の病棟から呼び出しを受けました。 これもその日、研修日でいない医師の担当患者でした。同様に採血、レントゲンオーダーを入れ、血液培養、痰培養を採取して、 抗生剤を開始するというルーチンワークをこなします。この患者さんは幸い、上記の患者さんほど状態が悪くなかったので、 家族には電話説明しただけで終えて、状態が悪くなるようだったらまたコールをお願いしますと言って、終了しました。

「ああ・・・外来が全然進まない・・・このまま行くと終わるのは何時になってしまうのだろう・・・」と思いながら、 飛ばし気味に外来患者をさばいていきます。 22人中、16人が終わったところだったか、12時30分過ぎに救急外来看護師から診察依頼が入りました。 「救急隊からCPA患者の収容依頼が入っています」ということでした。 「あの、今外来中でCPAを受けると完全にストップしてしまいます。それに今の時間帯は午前の担当ではないんですか?と僕が聞くと、 どうもこの病院では救急外来担当は12時切り替えだということでした。 僕はついにブチ切れて怒鳴りました。「そんなの無理に決まってるじゃないですか!ただでさえ外来患者が多くて大変なのに、 病棟からも何回も呼び出されて、そのたびに外来がストップして、何とかやっとここまで来て、 今度はCPAなんて、そんなの無理です。でも仕方ないから来てもらって下さい、外来は完全ストップです!」と叫びました。 「あの温厚な〇〇先生がついに切れた」・・・これはかなりショッキングな出来事だったのではないかと思います。 手が空いている他の先生がいないか、誰々先生に連絡して援助をお願いできないか、確認してみます、と外来看護師さんは言っていましたが、 最終的にCPA患者が運ばれて、外来看護師から連絡がきたのは僕でした。 「何か話が違うようですけど、僕が呼ばれたので行ってきます、外来の患者さんには事情を説明して待ってもらうか、良きにしておいてください」と言い残して 救急外来に飛んでいきました。

運ばれてきたのは、施設入所中の認知症高齢女性、昼食中に食べ物を喉に詰まらせたようで、施設職員の目撃者ありのCPAでした。 胸骨圧迫はルーカスという自動心マ装置が使われていたので、バッグバルブマスクにて換気して、心電図波形をチェックして、 ボスミンを数分おきに投与して、ということをやっていました。そうしているうちに、内科の2年下の医師が駆けつけてくれたのには救われました。 忙しいはずなのに申し訳ない気持ちで一杯でした。「あとは僕がやっておきます。外来の残りの患者をさばいてきちゃって下さい」と言ってくれました。 「忙しいのに申し訳ない。外来はすぐに片づけて、すぐに戻ってくる。でも1時間くらいかかるかもしれない」そう言ってその場を去りました。 時刻は13時近くなっていて、外来患者は6人残っています。 その6人には1人1人、遅れて申し訳なかったとお詫びしながら診察室に呼び入れました。 長時間待たされたことに対して誰も文句を言わず、「先生も忙しくて大変ですね」と逆に労ってくれた患者さんもいて本当に救われました。 無事6人の診察が終わったのが14時過ぎで、診察が終わるや否や、救急外来に駆けつけました。 患者さんの心拍は再開して人工呼吸器につながれていましたが、自発呼吸はなく瞳孔は散大していました。 橈骨動脈はどうも触れない状態ですが、心電図上は波形があるという状態でした。 担当してくれた2年下の先生は、ご家族にも説明して、昇圧剤は使わないこと、心停止時には再度胸骨圧迫は行わないことを確認して、 あとは経過観察というところまで進めていてくれました。 「ありがとう、本当に助かった。あとは見ておくから」と僕は感謝の気持ちで一杯でした。

程なくして心拍数が20〜30程度に低下し、心電図波形もPEAに近くなりました。これはもう間もなく、という状態でした。 数分後、心電図波形はほぼフラットというところで、家族を救急外来に呼び入れました。 心電図波形が完全にフラットになり、人工呼吸器を外して自発呼吸を確認したところ、ないことを確認し、 再度人工呼吸器につながないことを確認し、その場で死亡確認を行いました。 目撃者ありのCPAですが、当院への受診歴はほとんどなく、死因が不明ということで、 法に則って、管轄の警察に検死を依頼しました。死後の全身CT撮影も行いました。 これは結構時間がかかるものです。警察官が到着して一通り検死を終えて、採血して毒物反応もないことを確認して、 異状死ではないことを確認。CT所見の説明もして、死因として推定される原因について説明すると、 一通り手続きが終了となります。死因究明の解剖の希望の有無を確認して、死体検案書を作成します。 葬儀屋が到着すると、霊安室に呼ばれて、亡くなった患者さんを裏口から見送り、それで終了となります。 その間にも救急外来には何人か患者さんが来ていたため、その診察もしました。

その間、翌日退院する患者さんのことやその他のことで病棟にも呼ばれ、病棟に行くと救急外来からもコールがかかり、 一体僕はどこにいればコールがかからないのか、と思うほどの頻コールでした。 この日は午前中のことで気が立っていて、心の中は大荒れに荒れていたので、受け答えもぞんざいになってしまいました。 もう院内ピッチが数分おきに鳴るのが煩わしくて、いっそのこと、ピッチの電源を切ってしまおうかと本気で考えたくらいでした。

午後の救急外来当番は午後5時15分で終了で、当直医に引き継ぐのですが、 この日は当直医が外の医療機関に勤務している医師であったため定時には到着せず、到着するまでは救急外来居残り当番をしなければなりませんでした。 午後6時頃に到着し引継ぎ、そこで救急外来当番はようやくお役御免となりました。

ああ〜、やっとひと段落だ・・・病棟の仕事、全くやっていない・・・ まだまだ仕事は続きます。 まずは20人近くいる受け持ち患者さん全員を回診します。幸いなことに、その日は病棟患者さんは比較的落ち着いていました。 看護師さんからは「先生、今日は全然見なかったですけど、どこに行っていたんですか?」とも聞かれました。 「外来ですよ。外来でこき使われて死にそうになってました」と僕は言いました。もう話す気力も残っていなくて、 早く帰って寝たい、それだけでした。 温度板を見て、バイタルは変わりないかを確認し、カルテを書いて、採血やレントゲン、点滴、処方などのオーダー漏れがないか、 掲示板で看護師さんやスタッフから頼まれていることはないかを確認する、ということを患者さん1人1人に対して行い、 介護認定のための主治医意見書の依頼があれば記載し、紹介状を書いて、ということをやって、 何とかひと段落ついたのが、午後8時30分でした。

医局に戻り、自分の食事を自分の机に持っていって、冷たくなった昼食をすすりました。 一体、俺は何のために、こんなに馬車馬のように働かされているのだろう、と思い、怒りと侘しさがこみ上げてきました。 今日の午前中から午後にかけての、あの忙しさは何だったのだろう、僕はどうすればあの状況を回避できたのだろうか、と思いました。 外来患者をそれ以上のスピードでさばく?でも僕にとってはあれが限界だし、診察時間が3分を下回ると患者満足度が急激に低下するという データもあるようなので、診察には一定時間かけるのは仕方がない・・・それでは、病棟から呼ばれないように、 朝、ものすごく早い時間に来て内科患者100人以上の状態を把握しておく?いや、今日の誤嚥性肺炎の患者は朝食後発症したわけだから、 それを事前に予測するのは不可能だ。これは僕1人の努力ではどうにもならない問題のようでした。 病院のシステムの問題、内科医5人であれだけの外来患者と病棟患者を診なければならないことに加えて、 この日は研修日で内科医が2人も休みというのがおかしい、ということは明らかです。 そしてもう1つ。救急外来当番の切り替えが12時というのがおかしい。 病院の定時は午前8時30分から午後5時15分ですから、それを正確に2等分すると、午後0時52分30秒が中間地点となります。 従って、切り替えは12時よりも13時の方がどう考えても妥当です。 それに僕は午前中、定期外来をやっているのだから、その間は午前中の当番の先生が見てくれるくらいの融通をきかせてくれてもよいのに、 とも思いました。 これは僕自身の問題ではなく病院の問題ですので、提言していくべきなのだと思いました。 僕は期間限定で医局からこの病院に派遣されているだけですし、この病院は僕の所属する大学医局の閥ではないので、 何も言わずに大人しく引き下がるのが賢明なのだとは思いますが。

このように勤務医は内科外来に救急外来に病棟にと、あちこち駆けずり回りながら、奴隷のように働かされるというのが日常です。 今回は勤務医の1人として特に極端に忙しかった日について僕自身の体験を語りましたが、これに近いのが勤務医の日常だと 考えていただいてよいと思います。 医師は給料が高いから、それだけ働いて当たり前だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、 医師の仕事量を考えると、他の職業と比較して労働単価(単位仕事量当たりの報酬)はむしろ安いのではないかと思います。 「自分はこんなに大量の仕事をこなせる自信がない」という方は、医師を目指さない方が賢明です。 それでもどうしても医師になりたいと思う奇特な方は、どうぞ目指して下さい。

2017/2/19

 
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