30代からの医学部学士編入合格への道

医学部学士編入:医師国家試験について

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医師国家試験について

医師になるためのステップとして、社会人・学生の皆さんはとにかく医学部合格に向けて全力投球していると思います。 そんな皆さんが果たして医師国家試験のことにまで関心があるかどうかは分からないですが、 やはり医師になるための最終ステップとして、医師国家試験は厳然と立ちはだかる高い壁ですので、 やはり医師になりたい皆さんにとって、大いに関心があるのではないかと思います。

そこで、ここでは医師国家試験について経験者の立場から、いくつか小話をしたいと思います。 医学部受験・編入試験勉強の息抜きにでもお読みいただければと思います。

皆さんは医師になりたいという熱い思いを抱き、まずはその最大の難関である医学部入試を突破すべく日々勉強に励んでいると思います。 そんな難関に比べると医師国家試験合格なんて大したことはない、と思っていらっしゃるでしょうか。

医師国家試験の合格率は高いのは事実だが・・・

医師国家試験の合格率が毎年9割前後と非常に高いことは皆さんもご存知と思います。 そのような高い合格率の試験は自動車運転免許あるいはバイクの運転免許の筆記試験ぐらいしかないのではないかと思う気持ちも分かりますが、 合格率が高いというただそれだけの理由で「受かって当たり前の簡単な試験なのではないか」と考える部外者の方も多いようです。

確かに数字だけ見れば「受かって当たり前の試験」ではありますが、それは医師国家試験を受験するのがどのような母集団なのかを抜きにして 語ることはできないことです。

医学部医学科というのは、いわゆる「つぶしがきかない」ところで、ここを卒業しても医師になれなければ「ただの人」です。 医学部で学んだことは医師になるためにしか使えない知識で、そこから一般企業に就職したり、転向したりということがほとんどできない (全くできないわけではありませんが)という事情があるわけです。 つまり医学部医学科に入った以上、ほぼ100%医師を目指さなければならないわけで、後戻りができない、 つまり医師国家試験に合格することは医学生ほぼ全員に課せられた至上命題でもあるわけです。 しかも、皆さんもご存知の通り、医学部受験はどこも最難関と言ってよく、日本全国の秀才たちのみに門戸を開いているというのが実情です。

つまり医師国家試験は、日本全国の秀才たちが「医師になるには合格しなければならない」という後戻りできない状況の中、 必死に勉強して臨む試験、ということになります。 合格率が90%ということは、このような状況にもかかわらず10%の医学生が落ちる試験なのだと言い換えた方が現実をよく言い表しているように 思います。

しかも大学によっては医師国家試験の見かけ上の合格率を上げるために、厳しい卒業試験でふるいにかけて、 受かる見込みがない学生には受験資格を与えないというところもあるそうです。 特に私立の医科大学の場合は、医師国家試験の合格率が、大学の評価を左右する大きなバロメーターとなっているという事情もあって、 その傾向が顕著のようです。

ところで、筑波大学は国家試験の合格率が毎年98%〜99%と日本全国の医学の中でも自治医大の次のグループにランクされるほどの高い合格率を誇っていて、 内部事情が気になる方も多いと思いますが、筑波大学では医師国家試験対策としては特に変わったことはしていないです。 6年生の6月頃から科目毎に国試プラスαレベルの卒業試験があり、最終的には皆がクリアして、学年全員、国試を受験しています。 意外だったでしょうか。

このように大学によって国試対策の力の入れ方は様々ですが、医学生全体で見ると、毎年10%前後の学生が国試に落ちています。 医師国家試験に不合格となった医学生は、医師になれず、「国試浪人生」として惨めな生活を送り、次年度再受験するしかないわけですが、 現役の医学生に比べて再受験者の合格率が低いことは よく知られています。一度落ちてしまうような人は、言ってみれば「ふるいにかけられて落とされてしまった」人であるからか、受かりにくいようで、 医学部入試を突破してきた秀才ですらそのような状況なのですから、 それはそれだけ医師国家試験が難関だという事実を物語っています。

このように一応建前上は言ってみたものの、個人的な感覚では、真面目に勉強・対策して臨めば、絶対に落ちようがない試験という気もするのですが、 もっと本音を言ってしまうと、この試験に落ちる人はそもそも医師になる上で何か問題があるような人という気もしないでもないです。 医師国家試験のことを「バカ発見器」と言っている毒舌の先生がいましたが、まあ言わんとしていることは分からなくはないです。

医師国家試験の特徴その1:一般問題・臨床問題・必修問題・禁忌肢も・・・

医師国家試験は現行では2月の中旬に3日間に渡って行われます。 9ブロックに分けられていて、それぞれに一般問題、臨床問題、必修問題があり、全問マークシート方式です。 一般問題200問(配点は1問1点)、臨床問題200問(配点は1問3点)、必修問題100問(一般は配点1問1点、臨床は1問3点)という構成で、 1000点満点です。

一般問題というのは知識を問う問題で、例えば「拡張型心筋症の治療薬として適切なものを以下から2つ選べ」のような短い問題に対して正解を選ぶ問題です。 臨床問題は「○○歳男性、受診する○日前から発熱、咽頭痛、頚部の腫脹、全身の発疹が出現し受診。・・・以下、身体所見が示され、 次に行うべき検査・処置として正しいものを選べ。治療として正しいものを選べ」などのように医学的知識を応用して、検査・処置・診断・治療を考える問題です。 必修問題にも「一般」と「臨床」があり、配点は200点です。

3日間に渡って500問という途方もない分量の問題を解く、しかも臨床問題ともなると文字数が非常に多いです。 しかも試験時間は平均すると1問当たり平均2分弱という計算になります。 単位時間当たり非常に多くの情報処理量が求められる試験で、しかも長い試験時間中、ずっと集中力を持続してそれを続けなければなりません。 僕は集中力と処理能力は結構自信があるので、こういうものは全く苦にならなかったのですが、 これがつらいと言っている人は結構いました。

医師国家試験の最も怖い点は2つあります。

禁忌肢を3つ以上選んでしまうとアウト

1つは「禁忌肢」があることです。これは「地雷」とも言って、どこに埋め込まれているかは示されていません。 500問という問題数の中で、この禁忌肢を3つ以上踏んでしまうと、他が全部正解でも不合格となってしまいます。 しかしこの禁忌肢にはパターンがあるので、友達同士で情報共有し合って、禁忌肢を踏まない対策をしておくのが有効です。 有名な禁忌肢としては、思いつくままに挙げると、「うつ病患者を励ます」、「頭蓋内圧亢進が疑われる患者に腰椎穿刺を行う」、「ペースメーカーが埋め込まれている患者に MRI検査を行う」、「血栓性血小板減少性紫斑病の患者に血小板輸血を行う」、「伝染性単核球症の患者にペニシリン系抗生剤を処方する」、 「高度腎機能障害の患者に造影CTを行う」、「緑内障の患者に抗コリン薬を処方する」などがあります。 他にも色々ありますが、有名な禁忌肢はそのまま覚えてしまって、それを避けるというのが有効です。 「禁忌キッズ」という、過去問から禁忌肢だけを集めた国試対策本がありましたが、これなどは面白い切り口だと思います。 それでも、それまでしっかり勉強してきた学生なら、改めて禁忌肢を集中的に勉強しなくても大丈夫のはずです。

必修問題で8割以上取らないとアウト

もう1つは必修で8割以上取らないと、他がどんなにできていても不合格となってしまうことです。 これが「必修」と言われる所以です。必修は臨床を行う上で基本的な知識、態度、技術を問うもので、可能であれば満点を目指したいものですが、 決して誰でも正解できるほど易しい問題というわけではなく、この問題で8割以上取らなければならないというのは、 多くの受験生にとって非常に大きなプレッシャーになっているようです。

このように医師国家試験はただ単に高い点数を目指せばよいというだけのものではなく、 このようにクリアしなければならない関門がある点が他の試験と異なるところです。 大きなミスが許されない医師という職業に就くための試験だからこそ、このようなハードルを設けているのだと思います。

医師国家試験の特徴:とにかく素直に考える

医師国家試験の特に臨床の問題は、珍しい疾患の症例が出題されることも多いですが、珍しい疾患ではあってもその疾患としては 典型的な病歴、症状、身体所見、検査所見が示されていて、捻りが加えられることはほとんどというか全くないと考えてよいです。 とにかくその疾患の典型を覚えてしまえばよいことになります。

例えば、「65歳男性。糖尿病、高血圧、脂質異常症で近医に通院中。○時頃から左前胸部に絞扼感が出現し、冷汗、嘔気、左頚部への放散痛が出現したため救急要請。 生活歴:喫煙1日20本×45年、身体所見で・・・」という具合です。これは誰でもACS(急性冠症候群)、AMI(急性心筋梗塞)と分かる病歴です。

同じ心筋梗塞でも、「86歳女性、夕食後から腹痛と倦怠感が出現したため自宅で様子を見ていたが改善しないため救急要請。既往:認知症、高血圧、糖尿病・・・」 というような症例は、実臨床ではあり得ますが、医師国家試験の問題としては出題されにくいということです。

とにかくその疾患の特徴をしっかりと押さえ、問題文を素直に読み、最も正しいと思える答えをストレートに選ぶ、そういうトレーニングが大切です。

医師国家試験合格の心構え:
人と違ったことをしない・理想を高く掲げない・孤独にならない・自分の能力を過信しない

試験と言うと、周りとは違うことをやって差を付けてやろうという半ば本能のようなものが医学生にはあるようですが、 極論してしまえば、医師国家試験の場合はとにかくどんな点数でもよいから合格することの方がはるかに大事です。 言ってみれば「差を付ける」のではなく、「差を付けられないようにする」のが大事です。 「差を付ける」ことを目指して頑張れば、差を付けられないのではないか、と思うかもしれませんが、さにあらず。 他人と違うことをしていると、皆ができる問題で取りこぼし、「こんなはずではなかった」と思う時が必ず来ると思います。 90%が合格する試験なのだから、周りと同じ勉強法で同じことを勉強するのが基本です。 大きく外さない勉強、これが何より大事です。

朝倉内科学、ハリソン内科学を通読してすべて覚えてしまおうともがき苦しんでいる孤独な医学生は、 遊び人医学生ともども国試落ちの1つのパターンです。 その理想は素晴らしいですが、国試に受かるためには要領が必要です。 だいたい人間の記憶力には限界がある上、医師国家試験のために詰め込まなければならない知識は膨大なので、 あまり余計なことをして回り道をすると、すぐにタイムアウトまたはハングアップしてしまいます。 記憶力の限界はともかく、タイムリミットは確実にあるので、少しでも短時間で要領よく覚えなければなりません。 そのためには、使う参考書選びを誤らないことが大事です。

具体的には、Question Bank(僕たちの間では「QB」(キュービー)と呼ばれています)国家試験過去問集が発売されています。 多くの医学生が購入している問題集です。この過去問集を5年分解いて自分のものにしてしまいます。 参考書としては、Year Note(イヤーノート)という分厚い参考書、サブノート:公衆衛生(国家試験では非常に大事な科目です)、 レビューブック(内科・外科)、(マイナー科)、(必修編)、この辺りが鉄板です。 これらを買い揃えて、ひたすら過去問を解いて解説を読んで、ということを繰り返していれば、合格できる知識は自然に身についてきます。 どうしても覚えられない人や語呂で覚えたいという人向けに「ドクターK」という面白い語呂合わせ本があります。 余談ですが、「感心しない遊んでる娘」(感染性心内膜炎を起こしにくい心疾患:ASD(心房中隔欠損症)、MS(僧房弁狭窄症)」などは 傑作と言ってよいと思います。

国試対策のためにわざわざ国試予備校に通うという人たちもたまにいるようですが、上記のような多くの医学生が選ぶ鉄板の参考書で、 周囲と歩調を合わせて勉強していけば、まず間違いなく合格できるはずです。

TECOMなどの国試予備校が実施している模擬試験は受験料が高いですが、受けておいた方がよいと思います。 国試の問題の分量と時間配分など実践的な練習にもなる他、現状把握にもなりますし、模試で出た問題はインパクト記憶に残って忘れにくいという 様々なメリットがあります。要するに、一般的に言われる大学受験の模擬試験と同様のメリットがあります。

医師国家試験に向けて覚える量は半端ではないので、遅くとも6年生の前半には国試に向けた勉強をスタートさせた方がよいと思います。 自分の能力、記憶力を過信して直前まで勉強を始めない人もいるようですが、そのような人は受からないと思った方がよいです。 医学部ヒエラルキーのトップの東京大学医学部が意外に合格率が低い原因はその辺りにあるのではないかと思います。 どんなに集中力と記憶力に優れている人でも、相手にする分量が半端ではありませんから、一朝一夕にはいかないと心得て早めに取り掛かって下さい。

以上述べたことをまとめると、医師国家試験に受かるためには、 とにかく人と違ったことをしない、理想を高く掲げない、孤独にならない、自分の能力を過信しない、これが国試合格の四原則と言ってよいと思います。

少し長くなりましたが、医学部合格を目指そうという受験生の皆さんにとっては、まだまだ先のことでイメージできない部分が多いと思います。 皆さんが晴れて医学部に合格して勉強を続け、医師国家試験対策を始めようという段階になった時、 もし当ページを思い出すことがあれば、またいらっしゃってください。

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